このCDは、レコード版だった「能楽囃子大系」の一部抄録に過ぎない。ただ、中でもこの道成寺は、世阿弥の再来といわれた観世寿夫の声を今、聞くためには一番入手しやすい音源かもしれない。「花のほかには松ばかり」から乱拍子、そして乱拍子謡と、この声を聞くだけで、寿夫の面影が彷彿とする。未だに、この人以上の能楽師は出ていない。不幸なことに、こういう音源が残っているだけに、かつての名人上手とは違い、単なる伝説や記憶の美化でないことを、思い知らされるのである。もちろん、この時の四拍子は最高なのはいうまでもない。