「能力主義」とは良くいわれる単語だが、一体何を評価基準にしているのか曖昧で、実は良く分からないものであると思う。
それゆえ、ヨーロッパ型の評価基準と混同されて用いられたり、論者によって恣意的に解釈されたりしてしまう。
本書では、日本で使われる「能力主義」がどのようなものであり、それが日本の企業社会といかに関わっているかを解説している。
筆者の認識によると、日本企業は個人別に査定を行って賃金を決定する賃金体系をとっており、それは労働者の“仕事”ではなく”潜在能力”に評価基準を置いた「能力主義」であるという。
つまり、どれだけ仕事ができ「そう」かという基準で賃金を決定し、それが年功序列賃金と融合した形で運用されているというのだ。
実際に何の仕事をどれほどするのかではなく、属人的な評価を行うことの弊害も述べられている。
すなわち、潜在能力とは会社への貢献を行うための漠然とした能力を差しており、企業への果てしない忠誠や過重労働を強いられることに繋がりやすいということだ。
それによって、出産や育児で労働時間が確保できない女性に対する差別的な処遇も生まれてくる。
それらの要因によって生み出されてきた「日本人の勤勉さ」が、日本的な企業社会を支えてきたということだろう。