東大の松岡先生の入門書。少し、趣味が偏っているかもしれないし、書かれている内容は高度で、入門書とは言い難いと思う。例えば、最初の曲目解説の「井筒」。ワキ、前シテ、中入、複式夢幻能、サシ、クリなどという言葉が、のっけから何の説明も無く、ルビさえ無く、出てくる。これでは、「能って、何?」って題名が期待する読者層(初めて能を見ようかと思った学生?)が読んでもちんぷんかんぷんだろう。
能の歴史の所では、松岡先生は、世阿弥は国家反逆の罪を問われ、佐渡配流になったのでは、と表章が文献学的に否定した、世阿弥=南朝末胤説に接近しているような、微妙で不思議な説明を行っている。これって、どうなの?入門書だから、素人は、白洲正子か梅原猛の本のことを連想してしまうかも。
能楽堂の案内は、実用的でためになる。例えば、京都観世会館の二階席は見にくいとか、横浜能楽堂の席のあたりはずれがおおきいとか。
友枝昭世、梅若六郎(今は名前が変わったけど)、浅見真州、野村萬斎の4人を見よ、と言っているのは、その通りだろし、大変親切だろうけれど、そこまで言い切ってしまって大丈夫か、と思わず心配になった。能の世界は狭く、古い体質みたいなので。