ヴァランダーは文学になって来た。スカダーには、まだ全然及ばないけれど。でも、作者の思いはスカダー以上かもしれない。スカダーはもちろん、ローレンス・ブロックのマット・スカダー。
でも、世を嘆き、国の状況を嘆く姿、そこに自らの使命と決意を思う姿は、単なる娯楽ミステリを超えている。大沢在昌の「新宿鮫」にもそんな雰囲気はあるけれど、ここではもっと強い。
さて、この作品、前半はとてもわくわくする。これは今年のベスト5は固いかと思った。後半もワクワクはあるのだけれど、あまりにヴァランダーに凡ミスや突っ走った行動が多くて、「アンタ、睡眠不足でミスばっかりで、それじゃぁ、優秀なのも認めるけど、リーダーとしては結構困った人だよ。」とたしなめたくなる。
数々のエピソードも、「捜査は、事件が解決しても全てが鮮明になるわけじゃないし、解決したら解明しなくてもよい部分はある。」というのが、確かにリアルでもあるんだけれど、小説の読者としては知りたいのだよね、スヴェードベリの周辺の出来事と過去とか。やっぱり知りたいのだよね。シリーズでずっと主要な登場人物の一人だっただけに、どんな人だったのか、細部までちゃんと知ってあげたいという気がする。
それにしても、雲をつかむようなところから無駄に終わる捜査をくじけずに積み上げて行って、小さな糸口を見つけながら、あらゆるものに発想のヒントを得つつ、可能性の低い方向も必ず追いかけて、最後には犯人を見つけてしまう、その手腕は文字を通じて横で見つめながら、「すごいなぁ」と感心してしまう。みんな不眠不休で、必死に働く。「あなたたち、みんながヒーロです。ありがとう。」と言いたくなる。
今後もヴァランダーは追いかけたい。魅力的なシリーズ。署の面々も、一人一人、どんどん魅力的に輝き出している。
ただ、既にすごく長いけど、気にしないから、細かなところまできっちり腑に落ちたいなぁ、この人とこの人はそういう気持ちで繋がったそういう関係だったんだ、と。それと、ヴァランダー、やたら忘れ物をして状況を混乱させたり、新人みたいな凡ミスで目の前で容疑者を逃したり、そういうのはさぁ、ちょっと作品の魅力を欠いてしまう。もっと違うことでサスペンスを高めて欲しい。だから、星は4つ。
外国の官憲の秘密情報庫で、下痢して困ってほんとにそこでウンコしちゃって、機密文書でお尻を拭いて、でも目的もちゃんと遂行して出て来るとか、そういう無茶苦茶ぶりは、下品過ぎるけど、強烈に人間味があって好きだったけれどね。疲れ過ぎて凡ミス連発の時は、まず、ちゃんと寝ないとね。