似非科学史、科学史、科学哲学の広く浅い、けれども腰のある良書だと思う。この分野の本格的な文献よりも遥かに読み易い上に内容もそれなりに濃い。
主眼は「科学とはどのような営みか」についての古きよき時代の素朴な科学観が既に崩壊していることを力説するものとなっている。
科学の自浄作用は迷信である、と断ずるかのような表現にピクっとくるが、よく読むと、レフェリー制による短いスパンでの自浄作用が、信頼を得た科学者間のみならず、いまいち作用していない、という指摘であることがわかる。全く、とまではいかなくとも、その通りという部分はあるだろう。そして自浄作用は「時間」が経った結果としてであると述べている。著者は自浄作用とは言わず、時間が解決すると表現しているが、何度読んでも、科学界そのものが長いスパンで見れば自浄作用を持っている、と結論している。無理やり反科学ぶる必要もないと思った。そういった部分は前半で、なかなかに面白い。
現在の科学会に起きた不正についても紹介しており、手柄の横取りや、盗用、論文の数による評価の弊害など話題は豊富。
しかし懐疑論的に楽しいのは、真の「背信の科学者」である似非科学、それも権威とセットになった似非科学・病的科学である。この方面でも大変に面白く、ウブな科学神話を信じるだけではなく、こういった暗部を知った上で、それでもなお科学が素晴らしいことを一回り上の段階で実感して欲しい。そんなことを思う一冊。