ホラー作家の道尾は、福島県の白峠村の河原で「……
レエ、オグロアラダ、ロゴ……」という不気味な声を聞く。
そこは、天狗の神隠しにあったとされる子どもの首が発見された場所で、
白峠村では、その子以外にも三人の子どもが失踪する事件が起きていた。
東京に戻った道尾は、霊現象を探求している旧友・真備のもとを訪れるのだが、
その際、真備に、白峠村周辺で撮影されたという4枚の心霊写真を見せられる。
それらの写真に写っている人々の背中には、二つの
眼があり、彼らは後に、全員自殺したという……。
超自然的要素を含んだホラー・ミステリである本作。
そのため、作中の謎が、どこまで合理的に解決さ
れるのか、予断を許さないつくりとなっています。
ミステリ的には、前述した道尾が河原で聞く不気味な声や、天狗の面打ち職人の老人が口にする
「ゴビラザ」という謎めいた言葉が、ホラー的雰囲気を醸成しているだけでなく、事件を解くカギにも
なっているのが秀逸です。
また、「背中に写った眼」という心霊写真の絵解きや犯人の特定に、民宿の主人が
所持する「東海道五十三次」の版画や天狗の頭巾などの小道具が、鮮やかな働き
をしているところなども見逃せません。
犯人については、真備の薀蓄パートで伏線が張られ、さほど意外性はありませんが、
犯人との直接対決で真備が行う“憑物落とし(笑)”には、冴えた着想がみられます。
あと、忘れてはならないのが、本作で最も損な役割を担わされた
といえる、認知症の老婆と、その息子である、ニートの四十男。
もともと、将来に何の展望もない暮らしをしていたとはいえ、
彼らを見舞う有無を言わさぬ悲劇には同情を禁じえません。
とはいえ、本作全体の読後感はけっして悪くなく、
結末の「怪異」も、それに大きく貢献しています。