『幻のサッカー王国』『ディナモ・フットボール』などサッカーを通して、帰属意識というか心の拠り所としてのナショナリズムについて書いてきた宇都宮徹壱さんが、初めて日本のサッカー、それもトップのJリーグからすれば4部にあたる地域リーグのチームを取材した連載をまとめたのが、この本。
一読『街道をゆく』のサッカー版ではないか、と感じる。グルージャ盛岡は南部藩の向い鶴がアイコンになっているなどサッカークラブから、その地域の歴史も鮮やかに浮かび上ってくる。ツエーゲン金沢はさすが加賀百万石という感じのインフラをバックにしているし《「香川で誇れるものといったら、うどんしかない」と関係者は口を揃える。よくいえば謙虚、悪くいえば自虐的》なカマタマーレ讃岐の話も面白い(p.112)。
Jを目指すこれらのチームに共通していると感じるのは、日本の中でいまひとつ地味な地域を本拠地にしていること。そうした本拠地をベースに地域振興を図ろうとして、手に入る様々な素材をブリコラージュしてとりあえず立ち上げたのが、こうしたチームなのかな、と。地域リーグからJFLへの昇格は、いまや最も狭き門になっていて、そこに著者はJリーグ「百年構想」の光と影をみる。