「ワイセツか!芸術か!血とSEXと残酷の嵐!露出描写ギリギリで迫る史上最大の興奮巨篇!」
これは1971年、この映画の日本公開当時につけられたキャッチコピーです。
「ギラツク性!熱っぽい風!日夜身悶えてはONAるメスの○○集団!」
○○は伏字ではありません。手元の資料が残念ながら字がつぶれてしまって読めないのです。(ホントに残念)
「異常快楽にふける野獣に若い女達はオール・ヌードで乱れに乱れる!」
「正常な人間ではとてもたえられない血と肉体の性宴!」
・・・まるでポルノ映画です。本作は“イギリス映画史上で最も凶悪な作品”とも呼ばれました。でもこれは、実際に起こった有名な悪魔憑き事件を描いた映画なのです。
17世紀、フランス。絶対王政の確立を目論む枢機卿リシュリューは地方都市の自治制度の廃止を宣言。ルーダンの町にも城壁を破壊するための使者がやってくるが、司祭グランディエ(オリバー・リード)は言葉巧みにこれを阻止する。魅力的な風貌に明晰な頭脳を兼ね備えたグランディエは女性たちの羨望の的、のみならずプレイボーイでもあった。尼僧院の僧院長ジャンヌ(ヴァネッサ・レッドグレーブ)もまた、彼への想いに取り憑かれ、淫らな妄想に耽る・・・しかし、グランディエの結婚の噂を聞き、嫉妬に狂ったジャンヌはヒステリー状態に陥り、彼を悪魔との密約者だと告発。彼女の狂気は他の尼僧たちにも次々と伝染していく。グランディエ失墜を狙っていたリシュリューはニヤリ。ここぞとばかりに、凄まじい悪魔祓いの儀式が幕を開ける・・・!
〈イギリス映画界の異端児〉と呼ばれ、スキャンダラスな作品を連発した監督のケン・ラッセルについては「リストマニア」や「ゴシック」のページで書いているので省略いたしますが、本作は彼の最高傑作の一つでもあり、内容的にもビジュアル的にも、相変わらずブッ飛びまくっているのです。
デレク・ジャーマンよるアヴァンギャルドなセットデザイン。そしておなじみ、シャーリー・ラッセル(監督夫人)によるポップでアートな衣装の数々。いつもながらの、時代考証なんかまるで気にしない暴走演出(笑)。中盤から始まるエクソシズムのシーンは、ほとんどアングラ・ロック・オペラ。
スキンヘッドで全裸の尼僧たちの、絶叫と狂乱。ロックスター(レノンそっくり)のような悪魔祓い師の過剰なパフォーマンス。聖水の浣腸注射。ゲロ吐き。悪魔祓いをショウのように楽しむ聴衆たち・・・。そしてグランディエは捕縛され、拷問の果てに火刑にされてしまうのです・・・。
本作は、「知覚の扉」で知られるオルダス・ハクスリーが、この事件について、当時の歴史・政治・宗教的な背景を含め徹底的に調べ上げて書いた力作「ルーダンの悪魔」と、ジョン・ホワイティングがそれを戯曲化した「The Devils」をケン・ラッセルが脚色したもの。
町山智浩氏によると、この原作こそ「エクソシスト」の元ネタとの事。ナルホド、読んでみると「冒涜的な言葉で罵る」「痙攣」「嘔吐」(汚物を吐くのが悪魔憑きの証なのだとか)「空中浮揚」「アクロバット的行為」(ブリッジ&スパイダーウォーク、などの奇態)といった要素はこの本の中に全て書かれています。ルーダンの悪魔憑き事件は、エクソシストものの原点、と言えそうですね。
久々のエクソシスト映画「ザ・ライト」も折りよく公開。また筆者がリスペクトしてやまない漫画家、五十嵐大介氏による〈エクソシスト・ミーツ・孫悟空!〉という世界を股にかけた破天荒なコミック「SARU」(上・下巻)も去年話題になるなど、なぜか最近なんとなく、エクソシスト。
そんな訳で「肉体の悪魔」も、満を持してDVD化の格好のタイミングなのです!ぜひぜひ。
さて「ルーダンの悪魔憑き」事件について書いてしまった以上は、あの映画にも触れなければなりません。
という事で、またまた調子にのった横断レビュー、「尼僧ヨアンナ」のページへ
【To be continued・・・】