本書は、以前放送されたNHKスペシャル「職業“詐欺”」を書籍化したものである。
平成16年から平成20年までの5年間で、振り込め詐欺の被害額は、約1318億円。被害者は、のべ9万6千人だという。
少しずつ読もうかと思ったけど、一気に読み終えてしまった。振り込め詐欺だけでない、射程の広い本だと思う。詳しくは実際に本書をお読み頂きたいのですが、個人的に気になった点をいくつかご紹介します。
「普通の人」と犯罪者と境界線は思ったより曖昧であるということ。記者が取材した(元)犯人たちは、学業優秀で礼儀正しくさえある大学生や、元サラリーマンだったという。そんな彼らが、受験の失敗や会社の倒産がきっかけで、犯罪に手を染めてしまうのだという。殺人や窃盗に比べて振り込め詐欺の手軽さが犯罪への境界線をいっそう曖昧にしているのかもしれません。
振り込め詐欺グループ内の格差。他の組織と同様に、振り込め詐欺グループにも、主犯格(リーダー)→実行犯(電話かけ役)・運搬(カネの運び役)→出し子(ATM引き出し役)のように階層構造があるのだが、末端の出し子役は携帯の闇サイトの書き込みに応募してきた、リュックひとつ、缶ジュースとタバコで命をつないでいるような人たちばかり。上の主犯格は、そんな彼らの弱みを見透かして使い捨てにする構造。『反貧困』の「すべり台社会」ではないが、ちょっとしたきっかけで、貧困者から、さらに犯罪者にも転落し得るのかもしれないということを教えられた気がします。
「セレブな生活」やら、グルメ→ダイエット→グルメ→ダイエット…で循環している民放のバラエティー番組と何という違いでしょうか。いろいろ批判はあってもこういう番組には頑張ってほしいと思うし、民放にも少しでもこのような番組や企画が増えることを(無理を承知で)願いたい。
特定の組織や特定の世代を安易に非難することは避けたいが、このままの、カネと物質優位の風潮では同じような犯罪が増えてしまうんじゃないかと心配でなりません。
新書サイズにしてはちょっと高めかなとは思いましたが、考えさせられる一冊でした。