この本には時間を掛けて集められた無名の職人による人生の至言がちりばめられている。一芸に人生を賭けた職人には、人生の達人と言える人々がいることが分かる。しかしそうした職人は今絶滅に瀕している。作る物が世の中で必要となくなった、作るための材料が手に入らなくなった、後継者が見つからないなどの原因以外にも、著者は行政による原因も鋭く指摘している。「文化の向上に寄与する」ことを目的とした計量法が、実は伝統工芸の基本となる尺貫法の使用を禁止し、曲尺や鯨尺を使った職人の職を奪っている矛盾は大きい。現在では著者らの運動が実り、行政は見て見ぬフリをしているが、こういう矛盾は何も計量法に限った話ではないことには注目すべきである。全般的に読みやすい文章で書かれており、使い捨てではなく使うほど価値の出てくるものに関心ある読者にはお薦めの一冊。