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聖餐城 (光文社文庫)
 
 

聖餐城 (光文社文庫) [文庫]

皆川 博子
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「馬の胎から産まれた少年」アディは、新教と旧教が争う三十年戦争の戦地を渡り歩きながら育った。略奪に行った村で国王にも金を貸すほど裕福な宮廷ユダヤ人の息子イシュアと出会う。果てない戦乱のなか傭兵となったアディは愛してはいけない女性に思いを寄せ、イシュアは権謀を巡らし権力を握ろうとする。二人の友情を軸に十七世紀前半の欧州を描く傑作歴史小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

皆川 博子
1930年生まれ。東京女子大学中退。’73年、小説現代新人賞受賞。’86年『恋紅』で直木賞受賞。’98年『死の泉』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 864ページ
  • 出版社: 光文社 (2010/4/8)
  • ISBN-10: 4334747566
  • ISBN-13: 978-4334747565
  • 発売日: 2010/4/8
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.8 x 3.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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24 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By AirWire
形式:単行本
戦争にくっついて回る最下層の傭兵達。その傭兵達の尻にくっついていくその家族、
あるいは彼らを相手に商売する酒保や娼婦達の集団である“輜重隊”のどん底の生活の中で
偶然出会った「馬の胎から生まれた少年」アディと「ユダヤの名家コーヘン家の末弟」イシュア。

国内諸侯に対する皇帝の権威と求心力の失墜した神聖ローマ帝国の末期
対立するキリスト教の新教徒と旧教徒の宗教戦争が、近隣各国の派兵や干渉を呼び、
国を超えた情報、流通網を持ち戦争自体を金儲けの手段と見なすユダヤ商人の台頭と
傭兵による国内の蹂躙によって国内が泥沼化して疲弊していく30年戦争を舞台に、
本来出会うはずのない二人の少年が、自らの出自に悩みながらも苦境の中で人生を全うする物語。

世界史的にあまり扱われていない30年戦争を、その時代背景と宗教的な歴史を丁寧に描き、
登場人物も実在の人物から架空の人物まで魅力的に彫り下げ、また練り上げられています。
綿密な資料の研究と精細な筆致、骨太なストーリーで読み応えもあり、一気に読めました。

タイトルの“聖餐”とは、イエスの最後の晩餐の逸話を基に信者達が口にするパンとワインの事ですが、
実はその起源はキリスト教以前に遡ると言われ、キリスト教の新教と旧教でも教義が違っています。
もし仮に、広義で聖餐とは神の恩寵とそれによってもたらされる富や食物である、とするならば、
この物語はまさに聖餐とその解釈を巡って、上は皇帝貴族から下は商人傭兵達、さらに賤民まで
あるいは新教徒と旧教徒そしてさらにユダヤ教徒が対立し、入り乱れて争う姿であると言えます。

その中で、登場人物達が自らがどうあるべきか、また、どう生きるべきかを見つめ、
力強く生きようとする姿は現代の私達の心を打つものがあります。
私達もまた聖餐城を探して戦っているのかも知れません。

重厚な装丁に負けぬ、戦場の大地と血の臭いに満ちたヨーロッパ史を基にした傑作です。
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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
醜い戦争 2010/5/16
By 汲平 VINE™ メンバー
形式:文庫
三十年戦争を描いた作品は、百年戦争のそれに比べて、意外なほど少ない。
戦争そのものが、宗教戦争、他国の侵略戦争、傭兵の無秩序な破壊略奪と、その性格を変えていったために話としてまとめにくいことや、百年戦争におけるジャンヌ・ダルクのような絶対的なヒーロー・ヒロインが不在なのがその原因かもしれない。
それを克服するために、この作品では、ユダヤ人の富豪の少年イシュアと傭兵となった少年アディの無名な2人の人物を主人公としている。
イシュアは、物語の初めで過酷な体験をし、人工人間「ホムンクルス」かと思われるほど老成した人格となり、醒めた目で将来を見通す力を獲得する。そして物資補給を通して、戦争そのものをも支配するようになる。
一方アディは性質を千変万化させる戦争の中で、心酔する傭兵隊長に愚直なまでに忠実にまっすぐ成長して行く。
この小説は、アディのビルディング・ストーリーであると同時に、戦争の内・外の2つの視点を駆使することで、醜く変貌して行く戦争の姿を描き出す作品となっている。
壮大な物語。作者の構成力、描写力に打ちのめされました。
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10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By aka
形式:単行本
皆川博子のヨーロッパを舞台とした作品「死の泉」や「冬の旅人」の20世紀とは
時代が異なり、17世紀の神聖ローマ帝国、三十年戦争を舞台とした少年の成長もの、
とも言える作品か?
同じ作者の15世紀の戦乱中の日本を舞台とした「乱世玉響」と同じく、
全編には透明な寂寥感が漂よっている。

「三十年戦争」と言えば教科書で身につけた知識ではグスタフ・アドルフ、
傭兵隊長バレンシュタイン、ウェストファリア条約と言った歴史上の人物、政治の流れ
ぐらいしか思い浮かばない。
が、本書では戦乱の中で生まれ、踏みにじられる側ではなく、
踏みにじる側の傭兵になることを自ら選び取り、成長していく
主人公アディを通じて、ユダヤ人、刑吏といった差別された人々との関わり中で、
戦争が日常となった時代のひとびとの生活と感情がまざまざと描かれ、
教科書的三十年戦争から血肉を持ったものとして三十年戦争がイメージできる様になった。

アディが純情、というか生まじめすぎるので星ひとつ落とします。
フロリアンとアディの別れの場面なんぞは美しすぎます…
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