精神的なバランスの崩れは出来る限り自身で取戻すべきだし、世の中の催眠療法とか、カウンセリングの類は怪しいものが多いのではないかと思っているのだが、この本はカウンセリングの是非や信憑性は別にして楽しめる。
まず、この手の世界を題材にしているという点ではあまり前例がないと思う。また、『定岡療法』なんてありえないと思いながらも、『もしあったらこんな恐ろしいことが起きるかもしれないな』と思わせる辺りは、『
嫌われ松子の一生』に通じるものがある。切ないラストは想定外ではあるが、『あり得るだろうな』という範疇だし、松子の病院でのシーンを髣髴させるものがある。
さらに、セラピストと保健の先生の対峙によって、カウンセリングの行き過ぎに警鐘を鳴らしている点も共感が得られるし、リアリティもある。
もっとも、例えトラウマの解消のためであったとしても、母親としての役割を捨てるリスクを犯して、死ぬことになってもかまわないという行動に出た件だけは素直に読むことは出来なかった。