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14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
カタリ派の歴史を知るだけでも価値がある,
By cozycoach (California) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 聖灰の暗号〈上〉 (単行本)
二人ほど前にレビューを書いた方が、「全キリスト者を侮辱」する作品と酷評しているが、この作品で取り上げられているカタリ派というのも立派なキリスト者であった、ということを忘れてはならないだろう。宗教的な権力闘争(とは言ってもカタリ派のほうに権力欲があったわけではないのだが)と政治的な領土獲得欲が都合よく手を組んだことで、滅ぼされることになった南フランスのカタリ派とカタリ派を擁護する貴族達、彼らについての歴史的な事実を推理小説という形を借りて日本の読者に知らせた、というだけでこの作品は価値がある。カタリ派弾圧に象徴されるような異端に対する抑圧は、キリスト教という宗教の病なのではなく、キリスト教会という制度の病である、ということをはっきり理解する必要がある。出来るだけ多くの方がこの作品を読んで、西欧の根幹にある制度の問題点を少しでも読み取ることが出来ればいいのだが。ただし、この作品、ミステリーとしては今一である。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
失われた歴史上の人々と現代を結んだ物語,
By
レビュー対象商品: 聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫) (文庫)
魅力的なテーマである。私自身もカタリ派には興味があるので、歴史的な事実も面白かった。また、フランスが主な舞台となっているが、状況描写も精密だし、分かり易い。ミステリーであると同時に、文化と歴史を描いている作品である。カタリ派の殉教の場面は衝撃的である。歴史小説を書く作家の大切な仕事の1つは、失われた時を再現することかもしれない。特にカタリ派の処刑を目撃しながらも、教会に大きな疑問を持った人々の証言は、決して私たちには届かないはずのものなので、それを作家の想像力から再現してもらうことは、貴重な経験であろう。また、冒頭の詩は作者の創作によるものだが、良く出来ていると思う。 ミステリーとしてはいくつかの疑問がある。カソリックの異端裁判や、異端者の処刑の詳細な記録が今現れたならば、確かに大きなイメージダウンになるかもしれない。しかし、そのために何人もの人を殺すような行為をするかどうか。異端審問そのものは良く知られた歴史的事実であるし、相当な記録が残っているからである。しかも、どのような記録であるかは殺人者にはわかっていないはずなのである。『ダビンチコード』の場合はキリストが結婚して子孫を残していたことを隠そうとする教会という設定である。これはキリスト教にとって大変な事実であるし、独身を原則とするカソリックの聖職者にとっては、プロテスタントよりも大きな打撃であろうから。 例えば現在知られている新約聖書の資料よりも古いものが発見されて、それがカタリ派の教えに極めて近いというようなことがあれば別だが。 また、細かい部分だが、学会での発表や質問の場面が、あまりに学問的でない。揚げ足をとるようになってしまうが、一遍とフランシスコの比較の部分などはかなり初歩的な議論である。また、ヨーロッパでの学会の最中に、発表内容とは直接関係のない部分で現代のカソリック批判をすることもあり得ないと思う。日本と比べたら宗教が生活に密着しているヨーロッパでの宗教批判はダブーだと思う。学者がこのようなことをするとは考えにくい。 大きなテーマから見るとこのような細部はどうでも良いという人もいるだろうが、優れた作品になるためには、このような部分も精密に描くべきだと思う。とても好感の持てる作品であるからこそ少し残念である。 また、この作品では宗教が大きなテーマとなっているので、キリスト教か、あるいはもっと広く宗教に関心を持っている人の方が興味の持てる作品だろう。
13 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
現代人に必要なもの,
By ナカ (和歌山市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 聖灰の暗号〈上〉 (単行本)
おおよそ文学とは、著者の感覚を読者が感じるものなのかもしれない。そういう意味で言えば本著の意図するところは達成されているのではないだろうか。須貝、クリスチーヌ、エリック、エリーズ、カタリ派の聖職者たちと手稿を護り通した人たち。そしてその相反する立場にいる人たち。その人たちの心が読み取れる作品ではなかったか。と同時に、その心とは、現代人が忘れている人間らしい心。 いうまでもなく宗教と人間とは切っても切り離せない関係にある。悪の側に立つならば、宗教的権威と政治権力が結託して人間を支配しようとする心は現代にも生きている。その反面、宗教を人間の側に取り戻そうとする心もある。いつの時代もそれらがシーソーのように揺れ動いているのだ。 しかし、私は、本著を読んで思うに、人間らしい生き方、人間らしく生きるための、また人々と生きていくための「覚悟」を見たような気がする。そのことを感じるならば、本著に書かれたものが史実か、史実でないかは関係のないことなのである。 アリエス教授は言う、真贋を見分ける感性を持つことも人間にとって不可欠な資質だ、と。これこそが本著のテーマ、主題であるのだと確信する。現代に生きる人々はそのことを真摯に学ばなければいけないのではないだろうか。
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