二人ほど前にレビューを書いた方が、「全キリスト者を侮辱」する作品と酷評しているが、この作品で取り上げられているカタリ派というのも立派なキリスト者であった、ということを忘れてはならないだろう。宗教的な権力闘争(とは言ってもカタリ派のほうに権力欲があったわけではないのだが)と政治的な領土獲得欲が都合よく手を組んだことで、滅ぼされることになった南フランスのカタリ派とカタリ派を擁護する貴族達、彼らについての歴史的な事実を推理小説という形を借りて日本の読者に知らせた、というだけでこの作品は価値がある。カタリ派弾圧に象徴されるような異端に対する抑圧は、キリスト教という宗教の病なのではなく、キリスト教会という制度の病である、ということをはっきり理解する必要がある。出来るだけ多くの方がこの作品を読んで、西欧の根幹にある制度の問題点を少しでも読み取ることが出来ればいいのだが。ただし、この作品、ミステリーとしては今一である。