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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
記憶の糸を繰る,
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レビュー対象商品: 聖水 (単行本)
写実的な文です。山奥の町の夏が、陰と光の強いコントラストを基調に描きこまれています。この作品には、常に森の存在感があります。梢からこぼれる光と、蒸発する土中の水分。読んでいる最中に喉が乾いてくるような感触さえ覚えます。その森の重量感を贅沢にも背景に追いやっておき、作品は人心の交錯を描きます。背景の写生的表現に比して人間模様の描写は簡素なものです。そうでありながら、生身の人間の、貼り付くような質感を再現する作者の手さばきは見事です。忘れられた信仰。その記憶の糸を繰りながら、澄み、また濁っていく人の「生」。そのよどみにあって目を凝らせば、伝承の生まれた「森」にもう一度帰るーそんな読後感を覚えます。この作品の主題の一つには人の生身の「生」があると思います。一度もそれを言葉にすることなく、そのかがやきと不気味さを同時に飲みこんでいる本作品を前に、読者である私にできるのはただ佇むことのみです。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
読了後もしばし沈思黙考でした……。,
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レビュー対象商品: 聖水 (文春文庫) (文庫)
デビュー作品「ジェロニモの十字架」から、芥川賞受賞作品「聖水」までの四編の短篇。
そのどれもが、重いテーマだが、作者の筆力によって作品世界へ深く誘われるし、作家としての力量を感じさせ、読了した後も心に深く残る。 田中俊廣氏の解説にあるとおり、共通のモチーフは「生きがたい日常と現在を、精神性と心性を保ちながらどのように生きるか、と言うところにある」と同感する。 読了後、主人公を激しく揺さぶった現実から、主人公は立ち上がり、これからどのように生きて行くのかと考えさせられる。もちろん、方向性は作者が示しているわけだが、そこに、主人公の真摯な生きることへの執着というか強かさが感じられ、決して未来は暗くないと思わせられる。 すごい作品群だなぁと、思う。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
長崎は今日も聖水に濡れて,
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レビュー対象商品: 聖水 (文春文庫) (文庫)
文學界新人賞出身らしい、本格的で力のある小説です。何を以て「本格的」とするかは多々論はあるでしょうけど。 当たり前のことですが、小説というのは文章で描写して読者に伝えるものです。既存のイメージに頼ったり、展開だけを急ぎ足で追って場面の描写がおろそかになっている小説も少なくはないのですが、本格派青来有一は違うようです。 表題作『聖水』についていえば、長崎の夏の描写が細部にわたって綴られていて、それでいて決して冗長ではありません。その中で少しずつ、登場人物の葛藤と事件の展開が読者に自然な形で説明されています。 ただ、文章はちょっと読みにくいです。次の改行に至るまでの一つの段落が長いのは悪いことではないのですが、せめて「」に入った台詞の部分だけでも改行してあれば読み易かったのですが。でもこの読みにくさが、長崎の抱える幾分重苦しい独特の雰囲気を表しているともいえるのですが。
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