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この作品の主題の一つには人の生身の「生」があると思います。一度もそれを言葉にすることなく、そのかがやきと不気味さを同時に飲みこんでいる本作品を前に、読者である私にできるのはただ佇むことのみです。
表題作『聖水』についていえば、長崎の夏の描写が細部にわたって綴られていて、それでいて決して冗長ではありません。その中で少しずつ、登場人物の葛藤と事件の展開が読者に自然な形で説明されています。
情景だけでなく、人物描写も巧みです。特にヒロインのカヤノさんは魅力的に描かれています。長崎の空の下で、弾むように生き生きとしています。
ただ、文章はちょっと読みにくいです。次の改行に至るまでの一つの段落が長いのは悪いことではないのですが、せめて「」に入った台詞の部分だけでも改行してあれば読み易かったのですが。でもこの読みにくさが、長崎の抱える幾分重苦しい独特の雰囲気を表しているともいえるのですが。
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