しばしば当事者とは無関係に
様々な立場や見解からの議論に揺れることの多い、
代理出産がこの本のテーマ。
しかしこの物語では、
決してその是非を問うているというのではなく、
当事者となった女性、家族、そして賛否に分かれる医師たち…
それぞれの人々の思いをきめ細やかに描くことにより、
現に存在している、そして誰もが直面しないとは言い切れない
厳然たるジレンマについて、自分はどう考えるか…
ということに思いを向けさせます。
そこにあるのは、
ありがちな「倫理」や「正しさ」の押し付けでも、
感情論的な容認、ましてや推奨でもなく、
あくまで個々の人たちにこの現実について理解しようとする、
ひとつの機会という時間…
全く異なる考え方や立場が、
それぞれ同時に正しくもあるということ…
僕はそれはあり得ると思っています。
きめ細やかに語られる登場するひとりひとりが、
代理出産を選択するか否か…
自分の子宮に他人の子を受け入れるか否か…
どちらにしてもそのプロセスの中で湧き上がってくる、
女性として、男として、人間としての根源的な想いと感情…
綱渡りをしているかのような微妙な緊迫感を感じるとともに、
読み進めていく側も、何度も移ろい、揺さぶられます。
Host Mather…聖母…Holy Mother?
この問いかけはきっとこれからも繰り返されるだろうと思。
幾つもの個々の答えを、人は抱くことだとも思う。
でも、ひとつだけ確かにいえること…
生まれてきた子供だけは、絶対に不幸にしてはいけない。
このことだけは、
決して逸してはいけないのだと強く感じました。
見事な作品だと僕は感じました。