戦前、十七条憲法は天皇を中心とする日本社会を維持するために利用されてきた。
戦後派はその反動から十七条憲法や聖徳太子を賞賛することは軍国主義を復活させるものだとしてタブー視されてきたという過去がある。
しかし、この本を読むとそのいずれもが十七条憲法をそれぞれの勢力が都合の良いように解釈して、本来述べられている内容からはゆがめられて広まっていったことが分かる。
仏教と儒教を理解していなければ十七条憲法を正しく解釈する事はできないのだが、この本はその点を分かりやすく説明している。
また現代では教科書においても聖徳太子を生前の呼称である廐戸皇子と呼びかえ、その存在までも疑問視することが学会においても流行している。しかし、存在の是非に執着する余り十七条憲法に書かれた内容やそれにこめられた作者の意図まで考察することはおろそかになっている。
仮に十七条憲法を聖徳太子が作ったものではなかったとしても国の定めた書物に載っている以上、当時の政治にかかわるものが作り出したものであることには間違いない。
政治や行政に携わる者はどのような心構えが必要なのか。そこには現代の民主主義国家でさえも実現できていない高い理想がこめられている事には驚かされる。
単なる歴史や宗教の問題にとどまらない、さまざまな困難にある現代だからこそ生きてくる内容だと思う。