パワースポットなる和製英語がすっかり定着した。本来なら「聖地」を意味するホーリー・プレイス(holy place)という英語を使うべきなのだが、それはそれでいいだろう。言わんとすることは十二分に理解できる。
日本人はむかしからお伊勢参りや富士講などをつうじて「聖地」巡礼を行ってきた。祟りがあるから先祖を祀れなどのスピリチュアルは、ちょっと引いてしまうが、スピリチュアルこういうポジティブなものであるなら大歓迎だ。
本書では、フィールドワーク経験の豊富な宗教学者が、「聖地」とは何かについて、短い新書版ながら事例をつじて過不足なく説明してくれる。
聖地とは何よりも「場所の記憶」である。ある特定の場所にまつわる集合的な記憶であり、その場所への移動の集合的な記憶である。
そして、なんといっても、聖地は石から始まる。
石は最初からそこにあったのであり、人間がつくった人工物でも動かしたものでもない、ほんものの自然物だ。そして石は火山活動や、隕石の落下などによってもたらされたものでもある。人々の畏敬の対象になるのは不思議でもなんでもない。だから、聖地は何よりも石から始まる。
著者による「聖地の定義」を掲載しておこう。
01 聖地はわずか一センチたりとも場所を移動しない
02 聖地はきわめてシンプルな石組みをメルクマールとする
03 聖地は「この世に存在しない場所」である
04 聖地は光の記憶をたどる場所である
05 聖地は「もうひとつのネットワーク」を形成する
06 聖地には世界軸 axis mundi が貫通しており、一種のメモリーバンク(記憶装置)として機能する。
07 聖地は母体回帰願望と結びつく
08 聖地とは夢見の場所である
09 聖地では感覚の再編成が行われる
なるほどと納得される内容だ。
日本に限らず世界各地のパワースポット好きな人、「聖地」巡礼が好きな人は、かならず一度は目を通すことおすすめしたい。得るところはきわめて大きい本である。