ヌルシアの聖ベネディクトは西ヨーロッパの共住修道生活の基本形を作った人物であり、その共住修道生活のための戒律がこの本である。
普通に考えると、共住修道生活を送ることなど無い一般読者がこの本を読む価値は皆無に思えるかもしれない。
私も始めて読んだときはそう思った。
しかし、時が過ぎて改めて読み返してみると、この本にはヌルシアの聖ベネディクトが修得した聖性へ向かうに当たって必要な霊性の要点が詰まっている。
一見して「戒律」という名称からも分かるとおり「ああしろ」「こうしろ」の羅列に見えるが、彼はこの戒律の初めの段階で、独修士(初めからひとりで聖性を目指す人)を最もあるべきでない修道生活の形として明記している。
キリスト教が隣人愛の宗教であり、また貧しい者の宗教である限り、「ひとりで聖性を目指す」という一種の孤高を目指すような生き方は否定されなければならない。
独善を拒絶するためには、孤高は逆に危険となる。
彼の示す戒律は、全て、隣人を愛し、貧しい者であることを自覚し、傲慢と独善に陥らず、兄弟と共に聖性を目指すというベネディクトの霊性が生み出した指針なのである。
この観点から本著を読むと、この本は一般の読者にとっても有益な勧告が多く含まれていることに、おのずと気づかされる。
折に触れて読み返す価値のある良著である。