二枚目も三枚目も力作だが、この一枚目だけは明らかに彼女達の作品の中でも抜き出ているように思う。彼女達はこのアルバムを越える作品を作れない。なぜなら、ここには人気者になる前の苦闘が透けて見えるし、これを聴いていると、彼女達の血ヘドを吐くような努力と戦いがありありと浮かぶからだ。その切実さは後から取り戻せるものではない。ハシエリの声は、後に自分のロリィな側面を自覚してあざとくなっていく前の生々しい質感を持つ。化粧もうまく出来ない田舎の少女が、せいいっぱい背伸びして愛と孤独と自意識を叫ぶ痛切な歌声。普通に可愛くなってしまった今の彼女には絶対に出せない声だ。
音楽的には、これが見事に90年代の遺物である。ウィーザーやダイナソーJr、初期のレディオヘッドやアッシュ、電化以前のスーパーカーやくるり。それらを参照した、何とも芸の無いギターロックだ。が、そんな前時代性を補ってあまりあるリズム隊の圧倒的な巧さと天才的なメロディがチャットモンチーの強みである。ハシエリがあの奇跡的な歌声を摩滅させた今もチャットモンチーが第一線にいるのは、そのおかげだ。というか、今の彼女達の方が作曲能力も演奏技術も洗練され、磨かれている。けれども、私はここで聴けるハシエリの歌声、なにか苦痛に耐えながら絞り出すようなギリギリの高音域を聴くと、どうしようもなくノックアウトされてしまう。今はマスドレなんかの方が衝動的で良いな〜と思ってしまうけれど、やはりこれは高すぎる壁。金字塔。