2005年冬号以来の「考える仏教」特集です。副題は「「仏壇」を遠く離れて」。祖先崇拝の葬式仏教からも旧習やしがらみに毒された日本の教団仏教からも出きるだけ自由に、という趣旨ですが、登場する人物・執筆者のほとんどがそういうスタンスでそれぞれの仏教を考えています。この種の、「旧仏教」から「新仏教」へ、という話は明治期からずっと言われているような話ですが、寺檀制度の真にリアルな危機により、いよいよガチなトークとして盛り上がってきた、といった感触。
兵庫県の山寺・安泰寺でコミューンのような禅的生活を営んでいるネルケ無方さんへの取材がまずビジュアル豊富かつ興味深い発言に満ちており、高村薫さんと南直哉さんの対話は話題作『太陽を曳く馬』をめぐる面白い偶然についての話から生死論へとスリリングに展開し、釈徹宗さんと中島岳志さんの対談は、近代における親鸞と日本主義という、中島さんがいま本誌で連載している物凄く重要な議論について検討しており誠に読み応えがあります。その他にも、末木文美士の哲学としての仏教論や井上章一さんの京都のお坊さんについての卓見や尼僧の勝本華蓮さんによる尼僧の苦労話をはじめ、どれもこれも楽しくかつ学ぶところが大分たくさんあります。
そして多くの論者に共通してみられる発想が、仏教とは問い考え続けることをやめない宗教だ、という信念です。「仏壇」に埋没し思考停止することなく自己の/という問題に向き合い、オウムのような教祖独断型の宗教には徹底して否を唱えられる、人間と人間を超えるものとを考え続ける仏教。そのあるべき(はずの)仏教を考えるヒントが、本特集では随所に発見できます。