村上春樹は、なぜ、ここまで語ったんだろう? 真っ先にそう思った。
インタビュアー(今号を最後に退社する本誌編集長)への餞なのか?
それとも、”もう語っても良い頃だろう”
という小説家としてある領域に達したという自負心からか?
おそらく、その両方だ。
とにかく、これは単なるインタビュー記事じゃない。
好きな音楽、料理、服、などなど、多くの読者の興味を引くであろうことを、
正直に聞かれるままに、そして、どことなく恥ずかしげに、
なぜ、読者はそんなこと知りたがるんだろう? と苦笑しながら答えている感じも良い。
けど、そんなものは、ほんの読者サービスに過ぎない。
(そんな内容は、欄外コラムのようになっているところに、編集者のセンスを感じる)
「ああ、そうだったのか!」
独特の文体のルーツ。
会話と地の文のリズムへのこだわり。
そして、”人を惹きつける物語”とは何か?
を考え続けてきた30年間の軌跡。
ここに、村上春樹の小説世界の裏側が、おそらく全て明らかになっている。
そして、何故、多くの人が村上春樹の小説に魅かれるのか?の答えも垣間見える。
高校時代からずっと読み続けてきた一読者として、ようやく腑に落ちた。
僕は、これほど優れた小説論を知らない。
ただ、村上春樹の小説が好きな人も、これから創作者を目指す人も、
どちらが読んでも得るものは多大だと思う。
この企画が実現したのは、おそらく昔から村上春樹氏の担当編集者だった
インタビュアーの情熱、そして氏との信頼関係があってこそだったのだと思う。
本当に、掛け値なしに素晴らしい特集だった。