須賀敦子さんが亡くなって早いものでもう十年が過ぎてしまいました。
90年代の須賀さんブームはなかなかのもので、次々に単行本が出版され、
若い方ばかりでなく、中高年婦人の間に熱烈な読者が多かったものです。
当時、そのブームに少しばかり懐疑的だった私ですが、
今、須賀さんのご生涯を振り返ってみると、
研究者としての実力、生き方の真摯さと稀有な人柄にやはり心を打たれます。
そしてますます混迷を深める21世紀を見るにつけても
彼女にもっと仕事をし、時代について発言して欲しかった、と心から思います。
この『考える人』の特集は、須賀さんの妹さんへのインタビューで
須賀さんのご両親との関係・友人・人柄などをより深く解きほぐし、
同時に彼女が生前「宗教について書きたい」と言っていた小説
「アルザスの曲がりくねった道」の未定稿・創作ノートや
親しかった編集者が当時を振り返った文章・編集者に宛てた手紙の写真などが収録され、
須賀さんが描きたかった世界を、読者が多少なりとも理解する資料がそろっています
(特集は写真を含めて約80ページです)。
須賀さんの特集だけなら星5つですが、その他に収録された文章や漫画などに
若干もの足りないものもあった(丸谷才一さんへのインタビューなどは
読み応えがありますが)ので、4つと致しました。