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考えるヒントで考える
 
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考えるヒントで考える [単行本]

中野 剛志
5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 2,625 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

「知るとは即ち生きる事である」と繰り返した小林の真意とは―。気鋭の若手評論家が、小林秀雄『考えるヒント』を手がかりに、思想史をたどりながら、学問・知性・時代・政治・職業について、考える。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

中野 剛志
1971年神奈川県生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論)卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2000年より3年間、英エディンバラ大学大学院に留学し政治思想を専攻。01年同大学院より優等修士号(Msc with distinction)取得。03年論文‘Theorising Economic Nationalism’がイギリス民族学会(ASEN)Nations and Nationalism Prizeを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 204ページ
  • 出版社: 幻戯書房 (2010/04)
  • ISBN-10: 4901998579
  • ISBN-13: 978-4901998574
  • 発売日: 2010/04
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.8 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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62 人中、53人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ふんふん トップ100レビュアー
形式:単行本
 ゴールデンウィークに読み返したが、とても読み易くて面白い!
 「考えるヒント」とはもちろん小林秀雄の随筆集のタイトルだ。本書は、経済産業省の官僚であり、経済思想やナショナリズムに関する著作を次々に発表する学者でもある著者が、「考えるヒント」にヒントを得て、「学問」「知性」「時代」「政治」「職業」について考えてみるというエッセイ。もっと大まかに言うと、前半は主に学問論、後半は主に政治論となっていて、小林秀雄の“芸術・文芸批評家”とは違う側面に強く光が当てられているので興味深い。
 学問と政治に関する著者の見解は一貫していて、「日常生活の実践」に根差し、「自分の頭で」考えたものでなければ、学問の研究も政治の実践も無意味だということ。その見解を補強するように、小林秀雄の鋭利な警句が随所で引用されている。

 本書の最初の章では、著者が英国に留学していた時のエピソードがたくさん紹介されているが、これはめちゃくちゃ面白い!「近代西洋における優れた社会科学の方法が、小林秀雄が感銘を受けた仁斎や徂徠たちの学問と、おなじ地平に立っていた」(P.21)というのが著者の発見で、その地平とは「補助概念でわかったような気になるなということ」(P.27)であり、「自分の経験や常識に照らして納得したものだけを受け入れるということ」(P.29)であり、「読みの深さで勝負する議論を重んじ」「知識の量や流行を追う早さをまったく評価しない」(P.37)ことだという。
 また、日本の学者は他人の研究発表に対して「なぜだれそれを使わなかったのか」「だれそれについては言及していなかったが、彼をどう思うか」といった不毛な議論ばかり浴びせかけるので研究が深まらないという皮肉(P.38)や、イギリスの大学院で、学生の自己主張には寛容で温厚な教授が、「○○な意見も△△な意見も両方あって良いと思う」的な発言をした学生に対して、「君の態度は、学問を冒涜するものだ。そのような相対主義的な態度をとるのであれば、私のクラスから出て行きたまえ」と激怒したエピソード(P.45)などは、日本の知識人が耳を傾けるべきものだろう。

 本書の後半で著者は、「政治は虫が好かない」という小林の言葉を丁寧に解釈し、小林の政治観は文芸の世界への引き籠りでは全くなく、じつは「きわめて深い洞察に基づく大衆社会批判であり、全体主義批判」(P.134)であったと指摘している。制御不能な愚民の群れとしての「大衆」がイデオロギーを振りかざして少数者を弾圧する「全体主義」、それが小林のみた醜い政治であり(そんなもの「虫が好かない」のは当たり前である……)、2000年代になっても相変わらずその「大衆民主主義」は猛威を振い続けているというのが著者の診断だ。郵政選挙、政権選択選挙のドタバタを見れば、まったくその通りとしか言いようがない。

 小林秀雄自体は断片的にしか読んだことがなかったけど……小林ってこんなにも正統で鋭敏な思想家だったのかと改めて感心させられる。と同時に、「社会科学」や「政治」の現状に関する本質的な批判を、文芸批評家のエッセイの中に読み取っていく著者の解釈作業を通じて、「読みを深める」とはこういうことかと納得させられる一冊です。
このレビューは参考になりましたか?
20 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
人間社会に関わる学問とはどうあるべきなのかを明瞭に分析してみせた快著。

ヒュームの学問論(哲学)と、日本の伊藤仁斎や荻生徂徠の学問の在り方が同じであるという
大変な発見には目からウロコが落ちる思いがした。

学問とは・・・・である。
政治とは・・・・である。

いずれにおいても、明確な定義を見出した著者の洞察力は実に眼を見張るものがある。
これがイギリスの名門大学院(マスター・ドクター)で、知識量ではなく肝心なのは
洞察力(読みの深さ)なのだというアメリカとは全く別の学問世界で鍛えてきた人物の
力なのだと、誠に分かりやすい文章でまざまざと示してくれる。

著者はTPPの問題指摘で一躍注目を浴びたが、本当の地はこちらの洞察力を導き出した
哲学思想の方にこそあるのではないかと思われる。

それは、独立心を持って自分の頭で常識に基いて考えるという、この小林秀雄の「考えるヒント」の姿勢
こそが、保守思想的精神の本質なのだ基本認識は、保守思想に興味がある方々には必読の部分として
おすすめしたい。今まで、バークなどの知識や思考をたどることを保守主義を学ぶことと思っていたが、
この自分の頭で常識に基いてという視点こそ、今後の日本の保守主義の基盤となるであろう。

というわけで、ぜひ保守思想に関心がある方、そしてこれから学問に関わるすべての高校生・大学生に
必読の書としてお勧めしたい。
このレビューは参考になりましたか?
31 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 唐井庵 VINE™ メンバー
形式:単行本
普通のサラリーマンが小林秀雄を読むことなどあるのだろうか?

小林秀雄は試験問題に出る難解な文章を書く人で、何を言っているのかよくわからないと思い込み、敬遠したまま、ついに読むことなく社会人になってしまった、という人たちが多いのではないか。

しかし、この本を読むと、小林秀雄に急接近できるだろう。
すでにエッセンスを簡潔にまとめた素晴らしいレビューが掲載されていた。内容の重複を避けるため、そちらを参照してもらいたい。

小林は、思想や理論をかかげ生活実感のない頭でっかちを批判し続けた。だから論理や分析で頭をいっぱいにした人たち、特に戦前のマルクス主義文学者たちからは、(例えば、反論理主義者と言われ、)批判された。だが、この批判は必ずしも当たっていないと思う。

小林は思想を軽視している訳ではない。むしろ、思想のない実行家に対しては容赦ない。これに関連し、本書とは別に、小林の「無私の精神」から一部引用する。

「考えることが不得手で、したがってきらひで、止むを得ず
実行家になっている種類の人が一番多いのだが、また、
そういう実行家が、実行家らしい実行家の風をしてみせる
ものだ。この種の退屈な人間ほど、理屈など何の役にも
立たぬ、といつも言いたがる。偶然と好運による成果を
大言壮語したがる」
(小林秀雄全集<第12巻> p.105より)

著者は文学者ではないので「文芸に疎い」という謙虚なスタンスで本書を書いたようだが、「日常の経験を何よりも尊重」していた小林のスタイルをそのまま受け入れ、「文芸に疎いから小林秀雄について沈黙するということこそが、小林が最も嫌ったことではないか」(P.203)と語る。

私は、思春期の感受性の強い中学生時代にベートーベンの音楽に出会った。当然、ベートーベンを演奏するオーケストラの団員や指揮者のようにベートーベンの音楽を理解しているはずがない。指揮者だって、作曲家ほどには曲を理解できてはいないかもしれない。
しかし、中学生の私は、音楽を聞くことが生活の一部となっていた。生きていることを実感した。

小林秀雄は今でも理解できたなどとは到底言えない。でも、小林を読むと生きる手ごたえを感じる。理解を超えた何かを感じる。茂木健一郎のいう「クオリア」かもしれない。

文学とは縁のない一社会人にすぎない私も、「考えるヒントで考える」という本に出会い、また、一味違う演奏家による小林秀雄を知り、理解を深めた。

著者は、「教科書や参考書に出てきた小林秀雄に閉口した経験のある高校性や大学生に読んでもらえたら、と願っている」(P.204)ようである。しかし、付け加えたい。

日々の生活に流され、生き甲斐を感じることなく自己を見失ってしまった社会人、さらには気概を喪失してしまったかに見える多くの日本人にこそ、この本を読ませたい。
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