私たちは身近な道具を用いて、本来の目的とはかけ離れた行動をとることがあります。
コップを輪ゴム入れとして使ったり、梁(はり)を懸垂(けんすい)に使ったり。
そこには、十分に目的を果たせていないデザイン/システムが存在しているのです。
たとえば、
・何気なく柱の脇に置き捨てられた飲みかけのジュース
・支柱にもたれて立つ人々
・友人の背中を机にして字を書く人
からさえ、その状況の、その環境が好ましくないこと (あるいは理想的なこと)が示唆されます。
そうした例を写真入りで紹介したのが本書です。
実際のページの中には、大きな写真と、その写真に付随するヒント、ないしは気づかせ程度のコメントしか載っていません。理解するのに、少し頭を使う必要があるのです。
これが単なる不親切と見えるか、それとも考えるための好機と見るか、それは人それぞれですが――。考えようによっては、ここにもデザインが活きていると考えるべきでしょう。
これらの観察から、下記の四点がわかります。
1. 日常の中に存在する完成形のヒント
2. 安価で適切な手法
3. 人々が何を求めるか
4. 未だ改善されていない箇所
これは細かな人間心理を観察する事に他なりません。必然でない心の機微の中に、製品の、空間の、改善すべき箇所がまぎれているのです。
たまにページを眺めて、考えて。
そういう読書を望む人には、非常に良い本だと思います。
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著者は人間工学の方でしょうか、ちょっとはっきり判りません。ヒューマン・ファクタの草分け的専門家だと言う事です。
訳者は、建築系の元学者(今は、間もなく引退する予定のミステリィ作家)。
冒頭に、訳者の「デザイン」に関する”着眼”、”発想”、”計算”の三点に関する説明があり、これを読めばこの本の何が読むべき場所かが理解できる筈です。
巻末には、著者の「考えなしの行動 (thoughtless acts)」に関するアプローチと問題解決へ至る経緯が述べられています。
著者の知人の語る言葉、「"名詞ではなく動詞”をデザインする」。
そういうコンセプトが近いんだろうな。
本としては、結構ユニークな部類だと思います。