★ブレルは歌う。
「年老いたふたりには、いまはもう話すこともなく、ときおり、おたがいにそっと目をやるばかり。お金があろうとなかろうと、みじめさにかわりなく、もうゆめもなく、思いやりがあるばかり。….」
バンサンは友人に手紙を書く。
「私は、絵を描いています。ずっとブレルを聴きながら描いています。….ブレルの歌を聴かずには、一筆たりとも描いたり塗ったりすることなどありません。….ブレルのシャンソンの何がそんなに心をゆさぶるのでしょう。」
前書きを書いたことのないというクリスチャン・コンバは、バンサンにむけて書く。
「こんな表現の出来る人は、生きることの何たるかをご存知だ、とすぐに気がつきました。……….あなたのお仕事は余分なものを切り捨てて、品格をもって人間の信実を表現されています。老いたものにとっての哀しみは、外見ばかりにこだわる世間が、老いを醜いとしていることなのに、あなたくらいデリケートに、老いという主題を扱われることの出来る方はいないでしょう。本当にこの世での姿は老婦人であろうとも、心の奥に秘めたるもうひとつの「現実」ではまだ10歳の少女なんですよね」★
「老い」についてこれ以上語る必要があるだろうか?バンサンの愛ある人間の本質への凝視と「老夫婦」の姿のデッサンの真実。それは、私であり、あなただ。そう、人は 心の奥底では いつも同じとしなのだ。
それだけ分かっていれば十分だ。