「うつ病は気が弱いから、心が弱いからかかる病気ではない。先述のようにセロトニンが減少すれば誰でもかかる」。
老人性うつの本。痴呆症などに比べて見逃されがちなこの病気が、年配者の意欲低下や自殺につながったり、さらにはアルツハイマーなどの病気と関係がある場合があることも指摘し、その対策についても説明している本。うつ病全般に対する誤解を正している部分もある。著者は、学習法などの分野でも様々な本を書いている老年精神学の専門家。
米国のプライマリケア用の指導書として有名な書籍に、高齢者で気をつけなければならない症状として書かれている3つのD、すなわち認知症(Depression)、せん妄(Delirium)、うつ(Depression)のうち、老人性のうつへの意識が日本では弱い。しかし、日本の年間自殺者約33,000人のうち4割弱の約12,000人が60歳以上で、その背後にはしばしば心の病が潜んでいることを著者は指摘する。実は高齢になって脳の機能が弱ってくるとともに、うつ病を発症しやすくなる。しかし、それがしばしば年をとったからだとか、認知症の始まりだとされている結果、年配者が精神を病んだまま陰鬱な気持ちで余生を送ることになるケースが見られるのだという。また、年をとると様々な病気にかかりやすくなるが、それに心の病が加わることで絶望感が増幅されたり、食欲や動く意欲が落ちて体の衰えに拍車がかかるということもあるようだ。
一方、加齢によるうつ病は、比較的原因が特定しやすく薬による治療が効果を上げやすい傾向がある。SSRIやSNRIあるいはさらに新しいNaSSAという抗うつ薬の効能や副作用の説明、精神安定剤は筋弛緩作用があるので高齢者は転倒などのリスクに注意する必要があると述べている箇所もある。また、終盤では、著者が他の本でも述べている粗食への警告や生活習慣における注意点についても触れている。重要な部分はところどころ太字にしてあって、わかりやすい。