この老人にとって、このメカジキとは何だろう。
老いてもなお続ける漁とは何なのだろう。
そして私たちにとってのメカジキとは、漁とは?
本書121ページに現れる言葉は圧巻。
「魚をとるってことは、おれを生かしてくれることだが、
同時におれを殺しもするんだ」
戦わなければ生きているとは感じられない。勝たなければ生きる事はできないのだから。
勝った後に訪れるもの、何かを成し遂げた後に訪れるもの、それは無である。
徐々に醜く、容赦なく、削り取られてゆく「自分」
一度高い山に登ったからには、同じだけ低い場所へ降りなければならないのだろうか。
これほど強く訴えかけてくる文章を他に知らない。
これほど強く「戦って、勝って、生きて、死にたい」と思わせてくれる文章を知らない。
サンチャゴの帰還するベッドの傍らに、
彼から受け継ぐ事を待っている少年がいてくれることは
我々にとっても大きな救いである。