定年退職後をいかに生きるかの指南書です。「老いの才覚」のいわば男性版であり、サラリーマン経験のある森村誠一氏を選んだのは、なかなかのものです。
肩書きを外されてからも、人は残された時間を無駄に使ってはいけない。「 何もしなくてもいい自由 」より「 何をしてもいい自由 」を選んで、積極的に外へ出なさい。新しい人との出会いを求めること。外への興味も関心も失ったら最後、孤立してしまう。
60代以降の男性を対象にしたのか。ある程度、身につけておられる方が多いのではと思いました。今どき、自分で料理を何一つ作れない人は少数派でしょう。
残された余生、孤独に向き合う覚悟をするのは大切です。自立と孤独に耐える。これは帰属社会や家族の有無にかかわらず、人生の早い段階から各自が備えておかなければなりません。
ただ、「 何もしなくてもいい自由 」とは、無為無策だとする解釈は早急すぎる気がしました。一人暮らしの年配者が、自宅でゆったり、まったりと趣味に興じるのであれば、時間を無駄にしているとは言えません。
氏も散歩をしながら、俳句をつくるのを趣味にしているそうです。このような創作活動、ひいては文化・芸術の分野の趣味なら、「 何もしなくてもいい自由 」に自然とふれあいながら、無我の境地の中から生み出されるのではないでしょうか。たとえ他人から見たら、何もしていないように映ろうとも無駄ではありません。
余生までも、時間と絡めて “ 効率 ” と “ 生産性 ” を、最優先にして、追わなければならないのなら、いささか窮屈な生き方です。
組織を離れ一個人として生きるなら、時間の使い方も、組織に流れる時間の掟とは違ってくるはずです。この点に関しては疑問が残りました。