古稀をとうに過ぎた同じ高齢者として読んだときの感想は、女性は年取っても元気に物をいうものかな、ということでした。曽野綾子という作家については、通常とは少し違う独特の視点から書くエッセイが好きで、若いときからいくつもの作品を読んできたが、この本は著者の他の本ほど味わいがない。言いたいことをポンポン書きなぐったという感じがする。人の境遇はさまざまであり、生まれつきもっている遺伝子も違う。老年になると、会社や組織やときには家庭からさえも、いやでも離されるから、人による境遇の違いは際立ってくる。それでなくとも、病気、障碍、災害、貧困など、自ら望まず自分のせいでもない不幸を背負うことも少なくない。この本には老年に味わうどうしようもない不自由さに対する思いやりを感じない。下世話な言い方かもしれないが、著者の田園調布の家は親譲りで、しかも管理に庭師を頼むほど広い庭付き。著者は、74歳まで日本財団会長を務め、現在も種々の理事、代表、社外取締役の役にある。このような境遇にある人から、一文なしになったら野垂れ死にを覚悟せよ、老年の仕事は孤独に耐えること、などと説かれても説得力を欠く。この本を、人生のマニュアルや指針と思って読むと間違うでしょう。どこか一箇所でも、読んで元気になれるところがあれば、良しとすべきかも。最後のアデマール・デ・パロスの詩(マーガレット・フィッシュバック・パワーズ:1964の詩だと思っていたが?)は心打つが、この本全体の末尾にはそぐわないと思われる。