先ず、50歳以下の所謂若い人たちに薦める本とは思わない。還暦間際の私には、成程と思う事、老いるとは滑稽であったり、心理的に肉体的にこれからこの種の経験をするのだと、事前に聞く意味があった。
全体に、軽いタッチの本で、深刻な内容ではない。人生論などとは程遠いものである。あとがきにあるように、この著書は、読売新聞夕刊に月一回寄稿された随想の56回分をまとめたものである。個々の随想が独立しており、それぞれに完結している。愉快に読むのだが、後に残るものが少ないようにも思う。
試しに、随想のいくつかのタイトルを掲げるが、それを見るだけで或る程度、内容が推測できる。「廃車宣告された気分」、「崩れゆく老いの形」、「初々しい初老男性の時代」、「友を送る−これも同窓会」、「扉にぶつかり、窘められて」、「衰えを受け入れる気品」、「歳を取れなくなった時代」、「一つ拾い、一つこぼす」、「よろめきと戯れる」、「時の過ち、場所の間違い」、「老いを受け入れる気力」、「ヒガミとアキラメ」、「年寄りゆえの忙しさ」。