上下纏めて扱う.昨年の第一部に特徴的だったカスタム仕様の強く硬質の文体はそのまま保たれて,まず期待を抱かせられる.神々の恩寵を与えられた異能の人物が,帝国トップ4の貴族黒狼公に成り上がったヤエトの周りに次々と加わり,話はいよいよ大騒ぎとなるが,文体に守られて決して軽薄に陥ることがない.黒狼公の領地は北嶺国に隣接しているらしいが,北嶺のように苛烈な気候でないためか,ヤエトの発熱失神などは始めのうちは起きない.下巻大詰に至って,ヤエトが北嶺国王皇女ともども危機に陥ると,おなじみの発熱失神を頻発するが,この時ヤエトは同時に過去視の能力を思い切った過去に遡って再開発を試みていたため,幻視と現実の描写が同時に進行する形となって,この部分は難解である.再読の必要があるかも知れない.危機は北嶺の化鳥の騎士団の応援で回避され,黒狼公ヤエトは第二皇子を味方につけることに成功する.しかし,世界には亀裂が発生していて,これを修理しないと魔界の魔物が大量に入ってくる恐れがある.これが続編の主要テーマになるのではないか.ともかく抜群によく出来たファンタジーで,発展次第では大変な傑作となるだろう.先が楽しみである.強く推薦,但し第一部は必須.