本作品は航空機(特にレシプロ戦闘機)好きが見れば、大喜びしそうな内容の映画であります。テストパイロットとなる陸軍軍人の兄弟が登場しますが、真の主人公は一式戦闘機「隼」であります。
「加藤隼戦闘隊」でも隼が暴れまくるために、それほど本作品を評価されない方もおいでかもしれませんが、前者の一式戦は二型、今作は一型であります。それに試作機段階を意識したベアメタル仕様且つ、胴体に日ノ丸もありません。加藤隼戦闘隊の設定時代は41−42年のため、本来は胴体に日ノ丸はない筈ですが、撮影されたのは44年のため、日ノ丸が存在しています。
凱歌の中で試作機が強度不足のため事故を起こすシーンがありますが、これ実際には更に深刻であり、戦闘中にも空中分解したことがありました。ここも航空ファンとしては面白い所です。他にも武装がベンチにレストされているシーンがありますが、これは最初期型が装備していた八九式固定機関銃(7.7mm)であり、またまた見逃せません!訓練シーンも若干ながらあり、九九式高等練習機なども出ています。
一式戦闘機の高い性能を見せつける飛行シーンが多々ありますが、「燃ゆる大空」で大活躍していた九七式戦闘機を水平飛行であっさり追い抜かすシーンがあります。これは陸軍戦闘機の主人公交代を象徴するシーンであります(実際には43年の半ばまで主力は九七戦でしたが)。
最後の見所は対B−17戦であり、一個中隊の9機にて五分以上の戦闘の末に撃墜します。B−17の打たれ強さを象徴するシーンと共に、フォートレスに対する戦術が確立されていなかったのを連想させられるシーンです。開戦当初一部ながら、陸軍の隼と九七戦はB−17を共同撃墜しています。一式戦一型がB−17と本格的に交戦したのはこの映画ができた以降であり、対進攻撃の徹底が戦訓とされました。
人によってはこの作品を右翼的、国策的と批判されるでしょう。確かに太平洋戦争開戦前に「ハリケーン」と戦う筈がありませんし、九七戦などで快勝は不可能でしょう(九七戦は開戦当初ハリケーンに苦戦)。
しかし、「翼の凱歌」、「加藤隼戦闘隊」、「燃ゆる大空」は戦後に数多と製作されたあからさまな反戦映画などよりよっぽど真実を描いています。一式戦闘機がB−17を撃墜したのは事実、B−339とハリケーンを圧倒したのも事実、九七戦がI−15bisに大勝利したのも真実。但し、P−40には苦戦が多かったのも事実ですが・・・
果たして戦時中の映画と反戦に凝り固まった作品のどちらがまともなのやら・・・
少なくとも現在では、日本は敗戦国のため、本物の戦闘機を使って正しい姿を描いた作品は撮れません。悲しい現実でもあります。