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翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189)
 
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翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189) [新書]

柳父 章
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商品の説明

著者について

かつて、この国に「恋愛」はなかった。「色」や「恋」と区別される“高尚なる感情”を指してLoveの翻訳語がつくられたのは、ほんの一世紀前にすぎない。社会、個人、自然、権利、自由、彼・彼女などの基本語が、幕末―明治期の人びとのどのような知的格闘の中から生まれ、日本人のものの見方をどう導いてきたかを明らかにする。

登録情報

  • 新書: 212ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1982/4/20)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4004201896
  • ISBN-13: 978-4004201892
  • 発売日: 1982/4/20
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (10件のカスタマーレビュー)
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社会・個人・近代・美・恋愛・存在・自然・権利・自由・彼/彼女などの、西洋の概念を造語や従来の言葉を用いて翻訳しようとした明治人の苦悩が描かれている。この本が素晴らしいのは、先人の並々ならぬの努力が伝わってくることと、著者自身が膨大な資料にあたり実例を出しつつも断定を避け、謙虚にも「と私は考える」という姿勢を崩さないことだ。尊敬すべき研究者だと感じた。

「まえがき」において著者は次のように述べる。「日本の学問・思想の基本用語が、私たちの日常語と切り離されているというのは、不幸なことであった。・・・他面から見れば、翻訳語が日常語と切り離されているおかげで、近代以後、西洋文明の学問・思想などを、とにもかくにも急速に受け入れることができたのである」このような指摘を初めて目にしたが、まったく的確な指摘だと思う。

しかし何といっても面白かったのは「カセット効果」と著者が名づけているものである。「四角ばった文字」は、長い間の私たちの伝統で、むずかしそうな漢字には、よくは分からないが、何か重要な意味があるのだ、と読者の側で思い込むという効果である。中でも1890年に雑誌に掲載された「恋愛」の実例をあげ、「英雄を作り豪傑を作る恋愛よ。家を結び国家を固むる恋愛よ」をあげ、「いったこの人は『恋愛』を何のことと思っていたのだろうか」には噴き出した。感銘を受けると同時に楽しめる本書は、読者を魅了してやまない
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By カスタマー
柳父章は、曖昧な日本の言語の成り立ちのなかで、外来語 から翻訳された言語文化を検証する学者である。この本では、我々が普段黙認している曖昧な言葉が、外来語からの翻訳語であったことを教えてくれる。そして実際に翻訳を手がけた人々の苦労と苦悩の詳細を文例をもって検証することで、日本文化の中に当てはまる言葉がなかった翻訳語成立事情を明解に解析しているものとなっている。また、翻訳された言葉の、対象となった日本語のルーツを検証することで、翻訳対象となった言語圏文化と日本文化の比較文化論としても大変興味深い。この本のページが進むに連れて、現在、我々が普段使っている言葉が、どのように我々の社会の中で市民権を得てきたかが良く理解できるものとなっている。
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Amazonが確認した購入
私たちがある程度抽象的なものごとを考えようとすると、明治期に日本語に翻訳された西欧語に頼らざるを得ない。

たとえば、社会、個人、存在、権利などは、典型的な例である。(ただし、「権利」については、「権」という語に新しい意味が付与された事例の一つである)

舶来の新しい概念を、漢字を用いて新語を作ろうとした当時の知識人の迷いと試行錯誤のエピソードはたいへんに面白い。ただ、この著作でもっとも興味深いのは、著者が「カセット(cassette)効果」と名指す、そうした翻訳語が持つ特徴である。cassetteとは、元来は小さな宝石箱を指していたフランス語で、「中味が何かは分らなくても、人を魅惑し、惹きつけるものである」。たとえば、"individual"(英語で「個人」を指す)が、「人民各箇」だとか「一身ノ身持」などと訳されたとき、読者の側ではよく意味が分からないのであるが、何だか難しそうだから何か重要な意味があるのだろう、と勝手に受け取ってくれる、というわけである。

こうしたことばは、逆説的ではあるが、意味が曖昧であるか希薄であるほど、濫用され、流行することになる。翻訳語が使われ出したときに、意味の希薄であるままに濫用されたり、あるいは意味の複数性に由る矛盾が生じていたことは、著者が鮮やかに示している。そして、残念ながら、今日のわれわれにとっても未だ、困難で耳が痛い課題として残されている。日本人は、よく意味の分らないままにとにかくことばを翻訳して受容し、長い時間をかけて理解してきたともいえるのであるが。

明治時代の擬古文の引用が多く、慣れていなければやや読みにくいところもあるが、全体としてはかなり平易に「翻訳語成立事情」を説いた秀作。本書が扱っている翻訳語は順に、「社会」「個人」「近代」「美」「恋愛」「存在」「自然」「権利」「自由」「彼、彼女」である。こうしたことばに、日本語を使った日常生活にすとんと馴染まないような、若干の居心地の悪さを感じる人、あるいはそうしたことに問題意識を感じてきた人にはぜひ読んでもらいたい。
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