さまざまな学舎を舞台に、どこかオシャレで、そしてどこか「可笑しい」お話が繰り広げられる短編連作集です。十ある話の中には分かりやすいものあり、よく分からないものあり、ばかばかしいもの、にやけちゃうもの、感じ入っちゃうもの……本当にいろんな物語があります。が、そのすべては趣きのある、ということで共通しています。
私が気に入ってるのは第五話「ピンク・チョコレート」。この話には特に難しいヒネリも構成もないことは分かるかと思います。本作は全体的に見て、綿密な構成や複雑なドラマで魅せるものではありません。しかし、著者の入江亜季さんは「これだけの話」を絢爛たる絵と豊富な遊び心で装飾していくのが抜群に上手い作家なのです。
最初の数話だけを読んで甘く見ていると、すっかり見入ってしまっている自分の姿にあとあと気づくことになりかねません。ぜひそうなって、「やられた!」と唸ってください。勝手な言い分ですが、入江さん自身もそれを狙っているような気がします。
この厚さで短編連作、さらに装丁も豪華な割に価格は安いのでぜひ手にとってください。万人受けするとは言えませんが、いろんな角度から読者を突いてくる、非常にぜいたくな漫画です。