本書は、既に群集生態学を専門として研究に取り組んでいる大学院生や、若手研究者に一読を勧める専門書である。逆に、生態学を学び始めたばかりの学部生にとっては、群集生態学を敬遠させてしまう可能性もあるため、かなり敷居の高いものといえる。というのは、本書は群集生態学というタイトルを背負っているものの、群集生態学の概念を説明するような一般向け教科書とは一線を画し、今まさに議論の中心にあると言える学説についての書であるからである。つまり、本書で解説されている内容は、未だ生態学において定説として固定されているわけではなく、国内だけに目を向けても、肯定派と否定派が混在しているものである。本書の原書にあたるHubbellの「The Unified Neutral Theory of Biodiversity and Biogeography」は、発表から既に8年が経過した今でもなお群集生態学の中心的トピックとして研究者の興味を集めており、実証研究も年々増えてきている。こういった観点から、群集生態学を専門としている研究者にとっては、必読の書と言える。内容は、序盤でこれまでの群集生態学がたどってきた道を俯瞰し、中盤以降で統一中立理論についての細かい解説に入る。本書は、難解な原書が非常に読みやすい日本語に訳されており、未読の方はもちろんのこと、既に原書を読んだ研究者にも、ぜひこれを機に本書の再読を薦める。