雪山、山荘、吊り橋、密室、童謡殺人、見立て人形……
これでもか!とばかりにちりばめられた「本格」アイテムに、思わず購入しました。
いわゆる本格という分野で発売される小説が目に見えて減少している昨今、
このような豪華なラインナップを並べられてしまうと、多少バカミスが予想されようと心をくすぐられてしまうのがファン心理というものではないでしょうか。
王道の素材をちりばめたうえで、どのような新しい調理方法を見せてくれるのか。
そこに期待を膨らませながら読みました。
結論を言えば、なかなか満足のいく内容だったと思います。
古野さんの作品を読むのは初めてでしたので、独特の文体がはじめは気になりましたが、すぐに慣れました。
登場人物の名前も奇妙ですが、よくキャラが立っていて、挿絵がなくてもひとりひとりの造形が目に浮かぶくらいです。
作者のフランス語の知識や音楽方面に関する造詣も深く、よく小説を読んだ時に感じる「これは違うんじゃないかなあ…」といった気持ちもあまり起きませんでした。
個人的に、クラシック音楽がとても好きなので、登場人物がピアニストだったりヴァイオリニストだったりするのも嬉しかったです(パラレル風なわりにアルゲリッチなど、現代の実在人物が登場するのに多少違和感は覚えましたが)。
最初から最後まで、電車の中やお風呂の中も含めて一気に読んでしまいました。
世界観がかなり確立されていて、耽美的な雰囲気もややあるので、映像化されても面白いかもしれません。
昔の横溝映画のような風合いで観てみたいです。
総じて満足できる出来でしたが、本格のキモであるトリックに関してはやや「それ!?」という感じが否めなかったので、星4つで。