好きな俳優が出演している映画(BOX−袴田事件 命とは−)をきっかけに購入しました。
副題の通り、実際に起こった袴田事件をベースに、無罪の心証を持ちながら、多数決の合議に破れ意志に反する死刑判決文を作成した実在の裁判官の葛藤を描く映画だったのですが…。鑑賞後、2人の主人公「被告人・袴田巌」と「件の裁判官・熊本典道」にものすごく興味が湧いたので。
で、この本はその裁判官について徹底的に書かれたものです。映画では、ん??と首を傾げてしまった矛盾点も、この本を読んで納得したことが多々。何よりも、被告人の死を背負った悲劇の裁判官の美談としてではなく、時に彼を糾弾するような言葉も交えながら、脆かったり弱かったりどうしようもなかったりする「人間・熊本典道」として書かれているので、一気に読んでしまいました。また、熊本氏の家族・知人・友人や袴田事件に関連する方々への取材の様子も書かれているんですが、それぞれに心を打たれます。
敷居の高いテーマを扱っていますが、「個人」の目線におりてきているせいか、とても読みやすいですよ。美談と切り離して書いているのですが、筆者の熊本氏への<情>というのか、いくばくかのあたたかみが感じられることも読後感のよさに繋がっていると思います。裁判とか、冤罪とか、堅苦しく考えず読んで欲しい1冊。