・著者は、美術史や人類学の研究で有名な「ウォーバーグ(ヴァールブルク)研究所」の所長。
・訳者は、ヘーゲルの『精神現象学』などの画期的な新訳で知られる長谷川宏氏のグループ。
・700ページ近い本で、定価は7000円+税。
……ということで、2007年に本書のハードカバーが出版されたとき、固い内容の本を想像してしまい、手に取らなかった。
ところが先日、書店へ行ったら、このポケット版が出ていた。
1000ページ強(本文は辞書の用紙を使って厚みを抑え、400点を超える図版にはアート紙使用)で、2100円+税。
グッと身近になっていたので手に取ってみたところ、先の<思い込み>が完全に間違っていることを知った。
「はじめに」を読むと――《この本を書きながら私がとくに念頭に置いていたのは、美術の世界を自分で発見したばかりの十代の読者だった》とあるではないか。
しかも、(1)専門用語をできるだけ使わない、(2)図版に収録していない作品には言及しない、(3)取り上げるのは本物の芸術作品だけ……といったポリシーが貫かれているので、とてもわかりやすい。
さて本文は、洞窟絵画から現代美術にいたるまでの通史になっている。
ある時代の技法が別の時代、別の地域の作品にどんな影響を及ぼし、それがどう発展していったか、ということも丁寧に語られている。
こんなぐあいだ。
《【数千年前の】エジプト人はおもに「知っている」ことを描いた。【紀元前5世紀ごろの】ギリシャ人は「見えている」ものを描いた。だが、中世の画家たちは「感じている」ことをも表現できるようになったのである》(124ページ)
そして、絵画史に新しい時代を拓くことになる13世紀のジョットになると――、
《平面上に奥行きを生みだす方法を再発見した。……この発見によって、彼は絵画というものの概念を完全に変えてしまった。彼は「言葉代わりの絵」を描くのではなく、聖書の物語をまるで目の前で起こっているかのように表現してみせた》(150〜1ページ)
図版を1枚ずつ解説しながら、ゴンブリッチ卿が噛んでふくめるように語ってくれるこの<美術の物語>は凡百の美術の授業よりも質が高く、おもしろい。
お読みのように訳文もスッキリしているし、図版の色のノリも申し分ない。