ページ数は多いし、二段組だけど、活字が大きめなので読みやすいです。
パラグラフを登場人物の視点ごとにして短く区切ってあり、
家事雑用のために読むのを中断しても大丈夫。
文体も平坦を心がけているようで比較的テンポよく読めました。
ミステリとしては複雑ではありませんし、
トリックの整合性を補うための後付けを思わせる描写も無かったし、
「おはなし」としても完成されているので、読んで損はありません。
でも、きちんと説明のつかない部分(大筋には関係ないけど)がいくつか散見されるのと、
新書版は表紙がダメなので満点ではありません。
各パラグラフの冒頭でクレタ島の迷宮のエピソードをモチーフにしているものを
あちこちから引用しており、よいアクセントになっているのですが、
ひとによっては少々うるさく感じられるかもしれません。
探偵役の石動が披瀝する音楽嗜好も深くて狭い(←ほめ言葉)ため、
ちょっと気になるところです。
そうそう、随所においしそうな家庭料理の描写が出てきて、ちょっとおなかが空きますよ。
石動の一言が、登場人物の迷いという闇に一条の光を投げかけるはずなのに、
その光に気づかないまま物語は幕を閉じるのが、
登場人物の平穏を願って止まないオイラとしては
前作「ハサミ男」同様もどかしいですな。
一日かけてじっくり取り組むもよし、ナイトキャップ代わりにちょっとずつ読んでもよし、
なミステリです。