「美徳」という概念は、近代的な経営論とは一見隔たりを感じる向きもあるかもしれないが、論理分析的な経営や戦略に対して、本書では人間的な知や社会的な価値をより重視した、新しい時代の経営の資質を「美徳」と表現している。
それは人のあり方に焦点を当てたものでもある。
更に「美徳」を実践に結びつける為の知が、高質の暗黙知としての「賢慮(フロネシス)」としている。賢慮型リーダーの代表とされているチャーチルは以下の6つの要素を強く持っていたとされる。
(1)善悪の判断基準を持つ能力
(2)他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
(3)コンテクストの特質を察知する能力
(4)コンテクストを言語・観念で再構成する能力
(5)概念を共通善(判断基準)に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
(6)賢慮を育成する能力
こうした要素は必ずしも一貫しておらず、一見矛盾しているものがあるが、優れたリーダーに求められるものは、「善」を軸に持ち、現実の矛盾した要素の中で、中庸を知ることが出来るかということだとしている。複雑な経営環境の中で、(決して妥協ではなく)清濁合わせ飲むしたたかさを持つことが、求めるリーダー像である。