はっきり言って、この本を読むまで『団鬼六』と言う人の小説とエロ小説には大差が無い物と思っていた。
しかし読み終わった今、それは全くの誤解であったと思う。
全体にエロが満遍なく散りばめられ、詳細に書かれるのは性描写のみという、他にあるエロ小説と団鬼六が決定的に違うのは、心理描写の詳細さだ。
『痛みを感じる』程にその嫉妬や悲哀、欺瞞などの『人間の持つ黒さ』が、的確に、淡々と表現されている。
憧れるような美しさは皆無に等しい世界の中に描かれているのだが、凝縮された『性の悲哀』は、他の作家では描き得ないのではないか?
……遅ればせながらこの人のファンとなった一冊であった。
特に本書に収められた『不貞の季節』は、他の小説では読めない『悲恋』と思う。