美容整形に対する現代人の意識調査にもとづき、現代社会における人々の身体感覚や自己像のあり方を考察した作品である。また、近代日本における化粧品広告の変遷から、女性の美しさ(とそのつくり方)に関する語り口の変容を明らかにし、その時代的変化が美容整形についての意識の現在と密接にリンクしていることを指摘する。
美容整形は、しばしば、自分のルックスに対して劣等感を持っている人々や、異性にモテたい連中が進んで行っているものだと考えられがちだが、必ずしもそうではないらしい。すなわち、自分の外見にそこそこ自信がありまた他人から褒められる人でも、より「理想」の自分に近づくという自己幻想に魅惑されて、あるいはお気に入りのファッションやメイクが似合うようになるために、あえて整形をしているのであって、現在の美容整形の理由は、主に「自己満足」という点にある、という。
まあ、そういう理由から整形するゼイタクな人たちもいるだろうな、と思ったし、そこから自己の身体パーツの加工や評価による自己確認こそが人間のアイデンティティの本質、といった論点を導きだすのもなかなか説得力があったが、どうにも違和感が否めないのも事実である。やはりブス(ブ男)からの脱却、というのが美容整形の根本的な存在理由ではないか。著者がちゃんとインタビューした人々は、わざわざ美容整形についてのインタビューに応じているという時点で、そりゃコンプレックスの少ない人だろう、と思えてしょうがない。深刻な劣等感から整形に至った人たちは、その経験をフォーマルな場で語ることには躊躇しがちであろう。
ともあれ、本書は美容整形に関する学術的な本として日本では今のところ希少なものであり、独自の見解も提示されているので、それなりにおもしろく読めるはずである。