西洋を専門とする学者が、大家となった頃に日本研究に転身するケースがままあるが、これもその一例。よく調べられており、日本近代を考える上では貴重な書物となっているが、神林氏本来の切れは失われているように思う。
全体は二部構成で、第一部は岡倉天心と森鴎外を中心に、美学という学問がどのように日本に導入されたか論じられている。第二部は高村光太郎や浪漫主義の芸術論から、実際の芸術創作に当たって美学・芸術学が果たした役割を明らかにしている。
いずれも明治期の国家形成や教育行政との関係性に重点が置かれ、それはそれで面白いのだが、分析に甘さが残ると思う。芸術論内部の発展や特性を扱った部分が紀要壬生界だけに残念。