前作スペイン編は発売当時、大判の本(一冊本)で読んだが、フランス編のほうは買いそびれてしまったため、今回、文庫版で買いそろえた。
第一の感想を述べれば、伊集院氏の案内で名画めぐりをするとき、やはり判が大きいほうが断然いい、ということだ。
クロード・ロランの風景画(すばらしいものです)、<光の画家>ラ・トゥールのイエス(まさに幼子!)、ブーシェのポンパドゥール夫人(ゴージャスな美女)、モネのパリ祭(ほんとうに喜びが飛び跳ねている)……など、単行本と文庫本ではずいぶんと見栄えが違うはずだ。
2008年の夏、コローの「真珠の女」が国立西洋美術館にきたとき、何度も何度もその前に立ち返ったものだが、あのきらめきは残念ながら文庫サイズでは得られない。
とはいえ、それは伊集院氏の解説の価値を減じるものではない。
けっして衒学的になることなく、みずからが見たまま、感じたままを率直に記す文章はとても好感がもてる(前作スペイン編に感じられた一種の<はしゃぎ>はない)。
《絵画というものは、わかりやすくなくてはならないと、私は思う。わかりやすさこそ、万人の人々に何かを与えてくれる力を持つ》(フランス編2)
《私の好きなコローの言葉――「やさしさの方が、才能よりずっと大切だ。善良な魂があれば作品の中にあらわれるものだから」》(フランス編2)
《時間を鋲で打ち止めるように、物音を立てることもはばかられるような時間を、画家【フラゴナール「読書をする女」】はたしかに描いている》(フランス編1)
ほんとうにそうだよな、とうなずきながら、ふたたび絵のほうに目を移す<読書の時間>はじつに豊かである。