おそらく詩的……なのだろう。
原語で読んだら言葉の美しさが追及されているのかもしれない。
しかし歴史小説ではない。
詩情を追及した作品に時代考証を云々するのは野暮なのかもしれない。だが限度がある。
なにしろアレクサンドロスである。誰でも知っている「史実」くらいざっと考慮してほしい。
しないなら「一般にこう思われているが実はこうなのだ」といったフォローが欲しい。
この作品のブーケファラス(大王の愛馬・ふつう黒い)はなぜ白い? とか。
比較するのは気の毒だが、同じく女性作家による詩的な歴史小説ということで、ユルスナールのハドリアヌスあたりを思い出すと何とも言えない気分になる。幻想はある程度の泥臭い現実感とともにあってこそ美しい。この作品には幻想しかない。
実はこの前に、同じ作者の則天武后物を読んでいる。そちらは気に入った。二番目に読んだこの作品については、期待が高かっただけ評価が厳しくなってしまったかもしれない。だが、やはり二作の質そのものも違う気がする。この作品のアレクサンドロスは両性具有的というには女性的すぎる。私が勝手に確固たるイメージを持ちすぎているためかもしれないが、大王はもっと粗野で荒削りな辺境の貴種であって欲しい。女性性はその影にふっと匂う感じで。則天武后のほうにはアンドロギュノスの魅力があった。