静養のため久々に帰省(シャブロルの生れ故郷でもあるサルダン)したフランソワ(ジャン・クロード・ブリアリ)は、親友だったセルジュ(ジェラール・ブラン)が変わり果てた姿で酒に溺れていることに驚く。セルジュは子供が死産し、田舎でうだつの上がらない生活をしていることに絶望していたのだ…。
美しい響きのタイトルを持つクロード・シャブロルの処女作は、次作「いとこ同志」(59年)と裏表の構成を成す姉妹編と言えます。主演二人の配役と舞台設定(クライマックスでは雪が降り積もる寒村!)と、物語の結末をそっくり裏返したような関係ですが、ヌーベルバーグの発火点となった次作と比べて、この作品ではまだ初々しさや瑞々しさといったものが多分に感じられます。22分くらいの場面で、撮影用ケーブルを地面に引きずっているのが映っていたりするのも微笑ましい限りです。
しかし、冒頭にわざわざクレジットされているようにロケで撮影されている点(撮影監督はアンリ・ドカ)と、監督(の当時夫人)に転がり込んできた遺産によって製作された点は、紛れも無いヌーベバーグの特徴。後者について付け加えると、敬愛するヒッチコックに倣って監督本人が映画の中にちらっと登場しますが、例の飄々とした演技で「最近遺産相続したマヌケ」という内輪受けの役柄となっています。
そういえば、カイエ・デュ・シネマ誌の批評家出身の監督であり、その同胞たちが少なくとも始まりの段階においては互いに協力して撮影に臨んでいた点も、初期のヌーベルバーグ映画を観るときのお楽しみでしたね。シャブロル出演の場面には、本DVDに併録された短編「王手飛車取り」(シャブロルのアジム・プロ第一回作品)の監督ジャック・リヴェットの名前も使われています。また、当時ジェラール・ブランと結婚していたベルナデット・ラフォンが、マリー役で役柄に相応しい妖艶な魅力を発散しています。