核戦争で人類滅亡が懸念される中、米ソ首脳らに核廃絶を訴える手紙を送る等して人類存亡の危機を救おうとする自らを宇宙人と自覚した大杉一家とUFOを一緒に見て現実逃避的に自らを宇宙人と思い込んだうだつの上がらない悪意の3人組、そして一人の有能な陰を持つ政治家の思想と生き様が、三島自身の思想を色濃く背負って描かれている小説です。
三島の知人でもある評論家・奥野健男氏は「あとがき」で、大杉重一朗と羽黒助教授ら悪意の3人組との思想戦にドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の大審問官の章を引用しつつ、三島文学でも異色の作品で、政治、文明、思想、人類を自己の宇宙の中に取り込み小説化し人類の運命を洞察した思想小説で世界の現代文学の最前列に位置すると昭和42年に述べていますが、平成20年の現在でも輝きを失わない見事な評論だと思いました。
ここからは本書の最後の核心に触れるので、読後に目を通して頂ければいと思いますが、悪意の宇宙人との戦いに疲れ、癌に犯された大杉重一郎が最後に放埓に言った「なんとかやっていくさ、人間は」という言葉と大杉家が取った生まれ故郷(星)に帰るという行動は、人類の醜悪さを知る人(宇宙人)が、人類とは距離を置いて自分の世界で生きて行く(要はゴキブリなる人類を見放す)ことに他なりませんが、
しかし、地位も名声も才能も持ち合わせた時代の寵児であった三島はそのような厭世的な生き方は出来ず、彼はあくまで美しい星(金欲・資本に人類の精神が汚されていない地球)に生きる人類(日本人)の姿を夢見、その狂気(自刃)によってその実現化を試みたのでした。本書が、三島の自刃への序章の一端を担っていることは間違いないと思います。
小説・文学好きな方、三島ファンの方、いずれも必読の書だと思います。