ブータンは何もない国だが、何でもある国…といわれる。
ブータンの人に「あなたは幸せですか」と聞くと、多くは不思議な顔をするという。
実はブータンの国語・ゾンカには「幸せ」を意味する言葉はないそうだ。
それでも国民の97%が、「幸せかどうかと言われると、決して不幸ではない」
と答える。いわゆる「幸せ指数 GNH」97%と言われるゆえんだ。
自殺者もいないと言われている。
ブータンの風景は、まるで日本の昭和30年代のようでもあるという。
実にのどかでゆったりしている。
本書は、そのブータンへの賛歌でもある。
経済的な豊かさを手に入れるためには、いろいろなものを手放さなければならない。
どっちを取るかという問題ではなく、たとえば便利になるためには開発も必要だし、
そのためにはある程度の自然破壊もやむを得ない。
結局、どこで線を引くか、ということだと思う。
ブータンは、存在そのものが、
物質社会、競争社会を突っ走る世界へのアンチテーゼだといえるだろう。
何十年か前、北海道の寒村に行ったことがある。そこは貧しくて、
まだ郵便局のATMもなかった。けれども土地の人との自然な触れ合いがあった。
自然も豊かで、時間もゆっくり流れていた。
だが今はどうだろう。「昔は良かった」と言うつもりはないが、
「立ち止まって考えてみること」をこの本は教えてくれる。
ブータンに行こうと思う人は、ぜひ目を通しておいてほしい。
カラー写真などないが旅情をそそられる本である。