著者高任和夫氏が昭和21年生まれの今年62歳で物産の審査畑出身。彼が書く世界はどの作品も(とは言っても読んだのは3冊目だが)、同じ空気を吸ってきた時代、環境の同士としての安堵感があり、ヒーリングの音楽を聞いている感じが心地よい。「うそ」、「社長の再生」、「親友の娘」、「罪びと」、「濡れ衣」、「幸運の黒猫」6作の短編オムニバス作品であるが、柏駅東口のスナック「順子」が中心に置かれ、どの作品もこの店に入ると、藤倉(銀行OB、58歳)、井狩(商社人事部の部長補佐、49歳)、青崎(商社審査部の部長補佐、49歳、井狩と同期)、植草(鍵の取付け業者、40代前半)、美千代、ママ順子、ホステス美穂に会える。いずれも50代前後の銀行早期退職や商社窓際の男性いずれかが各ドラマの主役になる。会社の知名度につられて何も考えずに就職先を決めた咎を受けている、世の大企業に勤める多くの同類項会社員の心をよく捉えた小説である。入社してから数十年、多くの同期と出世に差が出て、サラリーマンは50歳が限度、疲労感も感じている、また社内である程度までは行くが、先が見えそれ以上は昇進しない50歳前後のサラリーマンが普通で殆どなのだろう。団塊の世代前後の善くも悪しくも時代の中心であったサラリーマンなら、かなりの同年代同世代はこの高任ワールドに同じ波長を感じることだろう。